リハきそ

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動作中に椎体に加わる負荷 Part4 :日常生活動作

さて、椎体に加わる負荷シリーズは、今回で最後となります。

 

 最終回は、日常生活でよく行う動作がどれだけ椎体に負荷を加えているかを調査した、A. Rohlmannらのin vivo研究を紹介していきます。

 

 椎体圧迫骨折(Vertebral Body Fracture:VBF)の患者さんが退院したとき、どの程度の活動は許容できるのか、またどの活動は制限しなければならないのか?

 

 明確な判断基準もなく、実際に生活動作を指導するリハビリテーション専門職にとっては悩ましい部分であると思います。今回紹介する研究も、その答えを明確に示してくれるものではありません。

 しかし、コンピュータ・シュミレーションではなく、実際に「人」から得られた貴重なデータです。これを参考に今後の議論につなげていければと思っています。

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 今までの報告と同様に、脊椎の屈曲を含むような動作では大きな負荷量がかかっていることが分かります。さらに、重量物を取り扱う動作はやはり大きな負荷が加わっています*。したがって、重量物を扱うような動作は、骨折部の治癒が十分に進んでから行うことが望ましいです。

 また、重量物はできるだけ体に近づけた位置で持ち上げるなど、過度な屈曲モーメントが脊椎に加わらないようにする工夫が必要になります。

 

*今回の報告では、対象者ごとに持ち上げる重さが異なっています。対象者の身体機能や疼痛、術後の期間を考慮し、統一した重量の設定ができませんでした。

 

 上記の結果は、当然といえば当然の結果です。しかし、図を見ていただければ分かるように、これらは入院中も含め、日常生活でほぼ必ず行うような動作が含まれています(洗顔、階段昇降など)。

 

 リハ室で気を付けていても、病室や自宅ではどうでしょうか?

 

 環境に合わせた動作指導を必ず行うようにし、また体幹屈曲を伴う動作を行うことのリスクも十分に説明しておく必要があります。Buckleyら(2009)は、単軸の圧縮力に曲げ応力が加わることで、圧縮力のみ場合と比べて、椎体の強度は40%低下すると報告しています。

 

 また今度記事にしますが、椎体の圧潰の程度が強い場合、3年以内に新規の骨折が起こる確率が高くなります(Delmas et al., 2003)。こうして、多発性のVBFとなると、脊柱の後弯変形が著明になり、それによるさまざまな弊害が起きてきます(心肺機能の低下、消化器機能の低下、慢性腰痛など)。

 

 話が逸れましたが、それだけ、VBFの進行は患者さんの中・長期的な予後、QOLに影響を与えてくるものです。よく見る疾患だからこそ、その理解があいまいにならないようにしていきたいですね。

 

動作中に椎体に加わる負荷シリーズ

Part1:歩行

Part2:起居動作

Part3:座位

Part4:日常生活動作

 

<文献>

A. Rohlmann, D. Pohl et al.: Activities of Everyday Life with High Spinal Loads. PLOS ONE. 2014; 9: e98510.

JM. Bukley, CC. Kuo et al.: Relative strength of thoracic vertebrae in axial compression versus flexion.Spine. J. 2009; 9: 487-485.

Severity of prevalent vertebral fractures and the risk of subsequent vertebral and nonvertebral fractures: results from the MORE trial. Bone. 2003; 33: 522-532.