動作中に椎体に加わる負荷 Part3:座位
椎体に加わる負荷 Part3 は座位姿勢についてです。
座位と一口に言っても、椅子の高さや背もたれの有無、座るときの姿勢などさまざまなバリエーションがあります。
座位姿勢は腰椎椎間板の内圧を高める姿勢でもあり、椎体に関しても同様のことが言えるのか?
座位姿勢は日常生活の中でも長くとっていることが多い姿勢でもあるため、椎体圧迫骨折(Vertebral Body Fracture:VBF)後の患者さんに対して的確な指導ができるようになりたいところです。
今回も、Rohlmannらの報告をもとに、さまざまな座位姿勢における椎体への負荷量について紹介し、臨床上での注意点・ポイントについて言及していきたいと思います。
まずは、背もたれのないスツール上での座位における、体幹傾斜角度と椎体への負荷量(合力)の関係です。
当然、体幹が前傾位の方が椎体への負荷量は大きくなっています。
では、背もたれがある場合ではどうでしょうか?
背もたれがある場合、平均36%椎体への負荷量が減少すると報告しています。
そしてそのままリクライニングさせていくと、130°傾斜させるまでの間に大きく負荷量が減少していき、130°の時点で垂直位と比べて負荷量は60%以下となります。
完全に背臥位になるまでリクライニングさせたときの負荷量は、垂直位のときと比べて17%~45%まで減少します。
裏を返せば、座位姿勢を保持するだけで背臥位よりもずっと大きな負荷が椎体には加わっているといえます。
背もたれの有無や体幹の傾斜角度だけでなく、上肢・頭部の位置も負荷量に関係していることが示唆されています。
上肢の位置は体側下垂位、大腿部、アームレストの順で負荷量を減少させることができます。また、頭前方位(Forward Head Posture)は椎体への負荷量を増大させていました。
離床が許可されたVBF患者さんに対して、座位姿勢での運動を行うこともあると思いますが、その際は背もたれとアームレストが付いた椅子を使用することが望ましいと考えられます。
さらに離床後間もない患者さんや、治癒過程が遅延している方に対しては、座位保持時間を通常よりも短く設定する必要がありそうです。
もう一つ、注意しなければならない点として、バランスボール上での座位が椎体への負荷量が大きいということです。これは、座位姿勢を保持するために体幹筋の活動が大きくなり、椎体への軸圧負荷を高めてしまうためだと考えられます。
バランスボール上でのエクササイズは効果がありますが、VBFの患者さんについては、十分に骨折部が治癒してから導入することが望ましいでしょう。
【動作中に椎体に加わる負荷・シリーズ】
<文献>
A. Rolhmann, T. Zander et al.: Measured loads on a vertebral body replacement during sitting. Spine. J.2011; 11: 870-875.