リハきそ

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動作中に椎体に加わる負荷 Part1:歩行

じめての投稿です。

今後ともよろしくお願い致します!

 

 今回は、様々な動作中に椎体が受ける負荷量についての報告をシリーズにしてまとめていきたいと思います。

 

 骨粗鬆症患者さんに多く発生する椎体圧迫骨折(Vertebral Body Fracture:VBF)。保存的治療の中で理学療法士が関わることも多い疾患です。

 

 VBFの治療プログラムにはまだ確立されたものがなく、いつの時期にどれだけの運動を行ってよいのかが明確になっていません。

 

 骨折の治癒過程については、継時的にCTやMRIを撮影することで追っていくことが可能ですので、個々の回復過程に合わせて活動量・運動を調整していくのが臨床では一般的です。

 

 では、その運動・活動は椎体にどれだけの負荷をかけているのか?

 

 椎体に加わる負荷量が大きくなるほど、骨折部の圧潰(collaps)は進んでいく可能性があります。

 

 A.Rolhmannらのグループは、椎体置換術後の椎体に加わる負荷量を測定しました。彼らは、椎体骨折患者に対し、椎体置換術を施行し、その置換された椎体内にセンサーを設置し、動作によって椎体にかかる負荷量を調査しました。研究の対象者は5名(L1 VBF 4名;L3 VBF 3名)。

 

 このPart 1では、歩行や階段昇降時に加わる負荷量について紹介します。

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静止立位時の椎体負荷量(合力)を100%としたときの値(中央値:%)

行時の椎体負荷量

 

  独歩の場合は、静止立位の場合と比べて、椎体に加わる合力は大きくなっています。しかし、歩行器を使用した場合には、静止立位時よりも小さくなることが分かりました

 

 一方、杖を使用しても独歩の場合と負荷量はほとんど変わらなかったと報告しています。

 

段昇降時の椎体負荷量

 

 階段昇降においては、降段時は平地歩行の場合と同等かやや大きい負荷がかかります。一方、昇段時は静止立位時の2倍以上の負荷がかかっています

 

 昇段時には体幹が前傾位となるため、椎体への屈曲モーメントが大きくなります。さらに、この姿勢によって上半身の重心が前方に移動するため、背筋群の活動が高まり、椎体への軸圧負荷が大きくなっていることが考えられます。これは、歩行時の姿勢についても同様のことが言えると思います。

 

 実際、Rolhmannらは、歩行速度が増大するほど体幹の前傾角度大きくなり、それに伴って椎体の負荷量が大きくなっていることも併せて報告しています。

 

 

 離床し、歩行を獲得していくにあたっては、歩行器歩行から開始する(当然ですが)。そして、歩行器の高さはやや高めに設定し、体幹の前傾を防止する。椎体への負荷を考慮し、これだけは守っておく必要がありそうです。

 

【動作中に椎体に加わる負荷・シリーズ】

Part1:歩行

Part2:起居動作

Part3:座位

Part4:日常生活動作

 

<文献>

A. Rohlmann, M. Dreischarf et al.: Loads on a vertebral body replacement during locomotion measured in vivo. Gait & Posture. 2014; 39: 750-755.