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圧迫骨折 新鮮例の画像所見と床上安静治療の効果

 今回は椎体圧迫骨折(Vertebral Body Fracture:VBF)の受傷直後の画像所見と、重症例に対する床上安静治療の効果についての報告を紹介します。

 

画像所見

1)新鮮例

 まず受傷直後の画像所見。画像所見から、骨折部が急性期なのか否かが分かります。特に、以下のような所見が得られた場合は、新鮮例でありかつ、その後の椎体圧潰の進行や偽関節への移行が示唆されるため注意が必要です。

 

 ①受傷時に椎体の20%以上が圧潰(蜂谷ら、1994)

 ②胸腰椎移行部の損傷(浜田ら、1998)

 ③MRI 脂肪抑制T2強調像やSTIRで高輝度の局所変化

 ④MRI T1強調画像で広範囲な低輝度変化(新鮮例では脂肪髄の高信号が消失)

 ⑤CTで椎体内にガス像(西田ら、2016)

 ⑥後壁までおよぶ骨折(破裂骨折:浜田ら)

 

 上記のような所見が認められる場合は、床上安静期間を設けることが推奨されます。特に、⑥後壁までおよぶ骨折の場合は、骨片が脊柱管まで突出するため、脊髄や馬尾神経を圧迫し神経症状が出現することがあるため注意が必要です。

 

2)経過

MRI

 T1強調画像での低信号のピークは受傷後約4週間、脂肪抑制T2強調画像やSTIRでの高信号のピークは約8週間であり、その後徐々に信号変化が軽減していきます。

【CT】

 受傷後約1ヵ月で骨量の減少がピークとなるが、この時期より後壁の骨量については徐々に増加する方向に転じる。骨量の増加は後壁→前壁→中央の順に進んでいく。

 骨折後のはじめの1ヵ月の間は、骨吸収が亢進することで骨量が一時的に減少し、物理的に不安定な時期と言えます。その後、骨形成ががさかんになっていきます。

 

床上安静治療の効果

 画像所見から、今回のVBFが新鮮例であることが分かった場合、床上安静期間を設けることが多いですが、

 

 ではどの程度の期間が必要なのか?

 安静度はどの程度に設定すべきか?

 

 といった疑問が出てきます。

 Kishikawaら(2012)は、VBF新鮮例のうち、以下のような所見が得られた方に対し、2週間の床上安静期間(non weight-bearing群:脊椎に一切荷重ストレスをかけない)を設け、それ以外の方には、基本的にはベッド上安静だが、最小限の荷重下での活動を許可しました(conventional relative rest群)。

 

 *non weight-bearing群の基準*

 ①胸腰椎移行部の後壁までおよぶ損傷

 ②中等度の神経学的異常

 ③骨折部の不安定性

 ④重度な痛み

 ⑤外傷による多椎体損傷

 ⑥骨折部のマルアライメント

 ⑦骨折による軽度な脊柱管狭窄

 

 その結果、圧潰の進行は、前壁・後壁ともnon weight-bearing群で有意に少なく、さらに6週・12週時点での骨癒合率も有意に高かったことを報告しています。また、遺残する疼痛の程度も小さくなっていました。

 

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 このように、重症例であっても、2週間の床上安静期間を設けることで、その後の骨折の進行を抑制し、治癒率を高めることができる可能性が示唆されています。

 

 しかし、2週間という期間、本当に脊椎に一切の負荷をかけることなく生活することが可能でしょうか?

 

 マンパワーの問題もありますし、VBFは高齢者に多い疾患であるがゆえに、臥床に伴う認知機能や身体機能の低下がリスクとして挙がってきます。

 

 そこで、Kataokaらは、活動量計を使用して、入院後最初の1週間の身体活動の量を調査(early physical activity time; EPTA)し、その後の圧潰の進行の程度や認知機能・身体機能との関連を報告しています。

 

 Kataokaらは、入院後すぐにベッド上で動いたり、歩行器で病室内を歩くことを許可しました。EPTAはこの病院生活中およびリハ中の活動量を測定しています。

 

 EPTAの中央値を基準に、中央よりEPTAが大きかったものをactove群、小さかったものをsedentary群とし比較しました。

 

 結果はactive群の方が入院時と比べて、入院後2週・4週のFIM運動項目やTrail maing test A(TMT-A)で有意に改善していました。また、下記の図に示すように、椎体の圧潰の進行には両群で有意な差はありませんでした。

 

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Baselineからの椎体圧潰の進行度(%)を示す

 この結果からも、受傷後早期にある程度の活動を許可しても、圧潰の進行が強くなるわけではないようです。また、EPTAの増大は、運動機能・認知機能の早期改善にもつながる可能性が示唆されています。

 ただし、この研究を臨床に落とし込む際には以下の点に注意が必要です。

 ①入院後2週・4週という短期成績のみの報告であるということ、②画像等を利用した重症度分類を行っていないこと。特に、②については、active群の方たちの骨折の重症度が低かった可能性を否定できません。

 

 以上の2つの報告から、画像上明らかに予後に影響を与える因子が認められる場合は、2週間程度の床上安静期間を設けることが望ましいと言えるでしょう。しかし、認知機能や身体機能の低下が著しい場合は、早期からの活動が有効となる場合があります。この点に関してはケース・バイ・ケースの対応にならざるを得ないです。

 

<文献>

蜂谷裕道:圧迫骨折・骨粗鬆症におけるMRI.MB Orthop.1994;7:173-185.

浜田佳孝 他:画像所見による骨粗鬆症性脊椎骨折の予後.整・災外.1998;41:1547-1554.

西田憲記 他:骨粗鬆症性脊椎圧迫骨折に対する治療-保存的治療からBKPまで-.脳外誌.2016;25:718-729.

Kishikawa Yoichi.: Initial non-weight-bearing therapy is important for preventing vertebral body collapse in elderly patients with clinical vertebral fractures. Int J Gen Med. 2012; 5: 373-380.

Kataok H, Ikemoto T et l.: Association of early physical activity time with pain, activities of daily living,and progression of vertebral body collapse in patients with vertebral compression fractures. Eur J Phys Rehabil Med. 2017; 53: 366-376.