リハきそ

整形外科領域を中心とした理学療法の臨床・教育・管理などの情報を発信します!

リハの質を上げる取り組み〜チーム制の導入〜

ハビリテーションの質を上げる。

 

これはいつまでも取り組み続けなければいけない課題ですよね。

 

 筆者が今、管理者として働いている回復期リハビリテーション病棟でも、どれだけリハの質を高められるか日々模索しているところです。

 

 そんな中、当部門で実践することとなった施策をシリーズで紹介していきたいと思います。

 

第1回はチーム制です。

 

 <アウトライン>

 

ーム制とは

一人の患者さんに対し、

  •  担当制:一人のセラピストが治療する
  • チーム制:複数のセラピストで治療する

のいずれかが選択されると思います。先ずはそれぞれのメリット、デメリットを考えてみます。

 

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ーム制のメリット、デメリット

(1)チーム制のメリット

多くの患者さんを治療できる

    チーム制にすることで、担当制の場合と比べて多くの患者さんの治療に関わることができるようになります。

 

    特に病床数が少ない場合や、スタッフの数が充実している場合は、どうしても関われる患者さんの数が少なくなってしまいます。

 

    経験値を高めるという点からも、チーム制の一つのメリットと言えます。

 

様々な意見を聞ける

    担当制のときは、基本的に臨床判断を一人で行わなければいけません。

 

    高度な臨床判断が必要な場面では、先輩や上司に相談することもあるでしょうが、実際に患者さんを対応していないため、適切なアドバイスを受けることができないことがあります

 

    その点、若手〜ベテランまで含むことができるチーム制では、同じ患者さんを治療するスタッフ間で情報共有や相談をすることができます。

 

若手の育成

    前述したように、チーム制では新人とベテランが同じ患者さんを治療することができます。

 

    OJT(On the Job Training)の重要性は周知の事実です。実際の臨床場面で即先輩に相談できる、指導を受けることができるという状態は、教育的側面から考えても非常に大切なことだと考えられます。

 

申し送り時間の短縮

    常にチームで情報を共有していることで、チームの誰かが休んでも詳細な申し送りが必要なくなります。

 

    さらに当部門では、申し送りに必要な書類作成が不要になり、業務の効率化を果たすこともできました

 

(2)チーム制のデメリット

  ・責任の所在が不明確

    担当制の場合と異なり、複数で担当することで、他部門との連携や患者さんへの説明などの際、誰が責任を持って対応するのか不明確になります。

 

    また、チームの誰かに頼ることもできるので、悪く言えば「サボる」こともできてしまいます。

 

    この点を改善することは、チーム制を導入するにあたってとても考えた部分でもありました。

 

スタッフ間でアプローチが異なる

    治療技術、知識に差があるスタッフ同士がチームになったとき、患者さんはその差を敏感に感じとります。

 

    そして、疑問・不安を抱いたり、クレームに発展してしまうことも考えられます。

    担当制の場合は、そういったセラピスト間の差を患者さんが感じる機会は少ないと思います。

 

    ただ、裏を返せば、技術のないスタッフがマスクされてしまう恐れもあるということです

 

    チーム制によって、スタッフ間の差が明確になるほど、解決すべき課題が浮かび上がってきやすくなることも事実だと考えます。

 

    一人一人がその課題に真摯に向き合うこと、そして部門全体で課題を共有することが可能になるため、見方によってはメリットに見えるかもしれません。

 

際にチーム制を導入してみて

(1)制度

    さて、上記のメリット・デメリットを踏まえた上で当部門では、一人の患者さんに対し、3人のPTで対応するチーム制を採用しました。

 

    チームは、リーダー1名とサポート2名から構成され、患者さんごとに編成されるチームは変化します。

 

    固定のチームではないため、様々のスタッフの意見を聞くことができ、また、職場全体のコミュニケーションの活性化にも繋がりました。

 

    そして、チーム毎にリーダーを立てることで、責任の所在をはっきりさせました。

 

     リーダーはプログラムの立案や他部門との連携、退院調整などを主として行い、他の2人がこれをサポートする形となります。

 

 立案されたプログラムを基に、リーダーは各スタッフの役割を明確にしていきます。

 

 毎回のリハで必ず必要になるプログラムは、全員が共通認識を持って実行します。

 

 一方、頻度が少なくてよいもの、特定のスキルが必要なものについては、最も適切なスタッフに一任する場合もあります。

 

 作成したプログラムをただ複数人で実行するだけでは、チーム制の良さは活かしきれません。

 

 チーム内の役割を明確にすることで、「自分にはまだできない治療」でも患者さんに提供することができるのです。

 

 そして、自分の得手・不得手を認識することで、更なる成長を促すこともできます。このような、役割分担をきちんと行うことで、セラピスト間の差を減らすことができると考えています。

 

(2)導入してみての変化

 当部門でチーム性を導入したことで生まれたプラスの側面をまとめると

  • 治療できる患者さんの数が増えた
  • 部門全体のコミュニケーションが活性化した
  • 若手を育てるという意識が部門全体に浸透した
  • 誰が何を得意としているのか理解できた
  • FIMの利得率のバラつきが小さくなった

  

 一方、課題として浮き上がってきたことは、

  • 筆者が思っていた以上に、スタッフ間の技術格差があったこと
  • チーム内で完結できる分、上司への報告がなくなること
  • 一人で考え抜く力が伸びないこと

 

 チーム制を導入したことで見えてきた課題に対処するために、いくつかの施策を打ってみました(MTDLPの導入、進捗状況の双方向性の報告、振り返り機会の提供)。

 

 次回からはそのあたりを紹介していこうと思います。